情報番組などでやたらと見かける賃金に関するグラフです。
「先進国の1人あたり実質賃金の推移を見ると、1991年から2019年にかけて、英国は1.48倍、米国は1.41倍、フランスとドイツは1.34倍に上昇しているのに対して、日本は1.05倍にとどまる。」
「日本はなぜ賃金が上がってこなかったのか」を経済学者などが解説しているわけですが、それらをまともに信じている人は得ている情報が偏っています。
マスコミを信じ切っている人たちは、40年~50年前くらいの超高金利時代の“金利”だけ見て「昔はこんなに良かったんだ」「銀行に預けておけば勝手に資産が増えた良い時代だったんだ」と短絡的に捉えている可能性は高いです。
「不都合な真実」をマスコミは100%取り上げません。
賃金、物価、金利はセットです。
「不都合な真実」のデータがこれです。
アメリカの消費者物価指数の推移
出典:世界経済のネタ帳
日本の消費者物価指数の推移
出典:世界経済のネタ帳
数値を抜粋して日米を比較してみます。
「米国の賃金アップはすごい」というのは大きな誤りであることは明白です。1990年と2020年を比較してアメリカの物価は2倍になっています。つまり、単純に貨幣価値が半分になったこととイコールです。生活水準を維持するためには収入を2倍にする必要があります。ところが賃金は1.4倍になっただけです。
日本の物価上昇は、ざっくりで10%アップ程度で、賃金は5%アップです。
物価に対して賃金はどうだったのか。そこを見る必要があります。
経済が停滞していた日本は物価も賃金も大して上がらず、さらにゼロ金利だったわけですので、支障は無かったのです。30年前からコツコツと貯金していても貨幣価値がそれほど落ちていなければ何も問題は無いのです。
ただし、社会保険料とか消費税などの負担が増えているので、その分だけでも賃金アップに反映すべきだったとは思います。正味使えるお金は10%くらいは減っているような気がします。(※計算していないのでそう感じるという話です)
さて、ここで「投資」の話です。米国に比べて日本は投資をしている人の割合が圧倒的に低いです。
出典:日本銀行調査統計局『資金循環の日米欧比較』(2020年8月21日発行)
貨幣価値が下がらなかった日本は現金を持っていれば良くて、貨幣価値が下がるアメリカは投資で増やすしかないのです。
ところが、いよいよ日本も外部要因による急激な物価高に押されて賃金アップに動きます。必然的に貨幣価値が下がります。「セットで金利アップするなら、銀行に預ければ良いのでは良いのでは」と思いたいところですが、日本の場合は金利アップができないのです。それは莫大な国債が原因です。金利を上げると発行済みの国債が急落します。
国債を大量に抱えている銀行は大きな含み損を抱え、3月に起きた米国の銀行のようなことになりかねません。もっと怖いのが7.1%もある外国人購入者です。日本国内の事情などお構いなしに、外国人たちに国債をぶん投げられたら国債が暴落します。
物価高、賃金アップ、金利据え置きになると「現金を貯めこむ」ことは実質的に資産の目減りです。
「賃金アップ」は一過性で終わる可能性が高いため、欧米のように日本もいよいよ投資で資産を増やす時代になるのかもしれません。
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