投資ブームということもあって投資関連本が大量に出版されています。ざっくりと著者の立ち位置として、経済評論家、投資専門家(元プロ含む)、儲けてきた個人投資家でしょうか。それぞれ自分の立場で自分の経験をもとに語っているわけですが、これからどうなるのかなど誰にも分かりません。ゆえに過去の出来事や経験してきたことを事実として今を語るわけです。
さて、株式投資の個別銘柄の売買は難易度が高いです。個別銘柄で利益を得るためには、自分で勉強して戦略を考えて実行して検証して反省してもっと勉強しての繰り返しが必要ですが、何も考えずに「とりあえず銀行に預けるよりマシな方法は何?」、「よくわからないけどコツコツ続ければ良いんでしょ」という人向けに推奨されているのが、昨年から大ブームになっている投資信託です。ざっくりで個別銘柄にチャレンジして損する人が大勢いるので、「長期投資なら投資信託を買っておけば良いんです」と誰も責任を追及されない提案です。私も「この人何も考えていないんだろうな」という同僚には「投資信託を買っておけば良いと思いますよ」と逃げます。切り札は「20年、30年後のお楽しみです」になります。
という適当なことを言っている「投資信託」のデメリット面を大暴露する書籍がタイミングよく出版されました。書籍もタイミングが大切ですね。昨年から全米株投資信託などを買って元本割れしている人が急増しているのですから。
投資信託の不都合な真実 (著)鈴木雅光
さわかみファンドの資金流出は止まらない!6000本ある投資信託の半分は投資する価値がない!?長期、分散、積立で資産形成ができるわけがない!
目次
6000本もある投資信託の半分は投資する価値がない?
さわかみ投信は大丈夫か?
意味がまったくない投資信託の騰落率
平均リターンの嘘
少額投資で資産形成はできない
同じ投資信託でも手数料が異なる「一物多価」問題
人気の裏側にある持続性のないコスト削減競争の顛末
粗製乱造に走ったETFのツケ
「投資信託会社が破綻しても財産が守られる」は本当か?
サイズの大きな投資信託は正義か?
出口を考えない長期投資は不十分
買わないほうがいい投資信託
投資信託と投資信託会社の独立性について
投資信託に特化した専門家の著書ですので、投資信託の真実が書かれています。数多く投資信託の書籍も出版されているため、インデックス投資のメリット面の解説はダブりますので、既知の情報ならそこは斜め読みで良いです。デメリット面や数字のマジックに関しては、初心者向けのムック本には決して書かれない情報ですので、「投資信託って本当に良いの?」と疑い深い人には貴重な情報になります。
日本はあれもこれもと行政側がやってくれるので、確定申告すらやったことがない人が多いはずです。そんな国民に「投資は自己責任なんだから自分で勉強して取り組みなさい」、さらに「老後の資金は自分で用意しなさい」ですので、「だったらどうすればいいの」と他人をあてにする人たち相手に「投資信託をやっておけばいいです。長期で取り組めば問題ありません」と誘導するのです。
著者は断言しています。自分で考えることができない人は投資信託すらやるな。今の下落相場で「長期だから何も考えずに買い増せばいいんだよ」が正しいのか誤っているのか。これは実際に自分でいろいろ考えて試してきた人でなければ、自分にとっての正解にはたどり着けません。
ひとつ言えることは「今始めるのがベストです」と言い切ることは無責任です。
昨年末から下落に転じた米国株ですが、下げて下げてちょっと上げて、下げて下げてちょっと上げての連続です。為替の関係もあって、円ベースだと爆損していないように見えても中身は爆損です。少し戻した時にドル高もいっきに進んだタイミングで、全米投資信託を半分売却して利益を確保しました。半分残した理由は「株ゲームの検証」のためです。手仕舞いしてしまうと検証ができず、単なるシミュレーションになってしまいます。その後の下落が止まりません。どこまで落ちるのか分からないのに、「ここはぐっと我慢です」はどうなのでしょう。爆下げになるのが確定した時点で撤退して利益を確保して、「ようやくここから上昇する」気配になってから買い直せばいいはずです。
「投資信託」を妄信している人にお勧めできる書籍です。
最後に1点、著者からの重要な苦言があります。老後資金のつもりで積み立てきた「投資信託」が、タイミング悪く株式市場の大暴落に巻き込まれたらどうしますか。「投資信託」には配当金がないため、切り崩しになります。つまり、生活費として使おうというタイミングで大暴落となったら洒落になりません。よって「ほったらかし投資」では危険だということです。
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